授乳中でも飲める市販の風邪薬はどれ?

2018/11/16

授乳 風邪

t f B! P L



風邪で体調がよくなくても、授乳中だと赤ちゃんへの影響を考えて、お薬を飲むことをためらってしまうこともあるのではないでしょうか。
今回は、店頭でもよく相談を受ける「授乳中だけど、市販の風邪薬で飲めるものある?」ということについてお話したいと思います。

具体的な商品名は記事の後半に載せているので、お急ぎの方はとばしてお読みください。



お薬の説明書「添付文書」に目をとおしてみましょう


市販薬の箱のなかには「添付文書」と呼ばれる説明書が入っています。そこには「使用上の注意」という項目があって、その中でもさらに「してはいけないこと」「相談すること」という項目に分かれています。添付文書の書き方にはガイドラインのようなものがあって、〇〇という成分が入っているときは〇〇の項目に〇〇と書かなくてはならない! といった細かい取り決めがあるそうです。

授乳に関することは、「してはいけないこと」あるいは「相談すること」に書かれています。どちらにも記載がない商品もあり、その場合は授乳中でも飲むことができます。

【してはいけないこと】
授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること
→ 吸収された成分の一部が母乳中に移行し、赤ちゃんに悪影響を及ぼす恐れがある

【相談すること】
次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
 授乳中の人
→ 吸収された成分の一部が母乳中に移行することが知られているが、赤ちゃんへの有害作用は不明



「してはいけないこと」に授乳の記載がある成分


下記の成分が含まれている製品には、使用上の注意の「してはいけないこと」に

「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること」

と書かれています。

  • ジフェンヒドラミン塩酸塩
  • ジフェンヒドラミンサリチル酸塩
  • タンニン酸ジフェンヒドラミン
  • コデインリン酸塩水和物
  • ジヒドロコデインリン酸塩

2009年から、コデイン類が含まれる薬について、授乳中の服用が「相談すること」から「してはいけないこと」に変更になりました。コデインが母乳に移行し、赤ちゃんにモルヒネ中毒が生じたとの報告があったために、変更になったようです。

市販の風邪薬でよく見かけるのは咳止め成分「ジヒドロコデインリン酸塩」です。そのため、多くの市販の風邪薬で授乳中の服用が禁止されています。



「相談すること」に授乳の記載がある成分


下記の成分が含まれている製品には、使用上の注意の「相談すること」に、

「次の人は服用前に意思、薬剤師又は登録販売者に相談すること
・授乳中の人」

と書かれています。

  • トリプロリジン塩酸塩水和物
  • ペントキシベリンクエン酸塩
  • dl-メチルエフェドリン塩酸塩
  • dl-メチルエフェドリンサッカリン塩
  • アスピリン
  • アスピリンアルミニウム
  • 安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン水和物または無水カフェインを、無水カフェインとして1回分量100mg以上含む製剤

市販の風邪薬でよく見かけるのは、気管支を広げる作用のある「dl-メチルエフェドリン塩酸塩」です。無水カフェインが含まれている製品も多いですが、1回分量100mg以上含む風邪薬はあまりないかと思います。



授乳中でも服用できる市販の風邪薬4選


以上のことから、授乳中に市販の風邪薬を飲みたいときは、主に次の点に注意して選ぶことになります。

  • 咳止め成分として「ジヒドロコデインリン酸塩」が使われていない
  • 気管支拡張成分「dl-メチルエフェドリン塩酸塩」が入っていない

実際に、私がはたらくドラッグストアで取り扱いのある風邪薬、約50品目(PB品含む、漢方単体薬除く)の添付文書をすべて確認したところ、授乳中の服用について何の記載もない製品はたった2品目しかありませんでした。咳止めとして「ジヒドロコデインリン酸塩」が使われているものが圧倒的に多く、咳止めが別の成分であっても「dl-メチルエフェドリン塩酸塩」が入っている場合が多かったからです。

うちでは取り扱いがないものも含めるともう少し多く見つかったので、具体的な商品名を4つご紹介します(今回は「漢方薬」ではなく、「風邪薬」に分類される製品から選んでいます)。


①新エスタックW/エスエス製薬


【成分】
  • アセトアミノフェン(解熱・鎮痛作用)
  • サリチルアミド(解熱・鎮痛作用)
  • クロルフェニラミンマレイン酸塩(くしゃみ、鼻水、鼻づまりを和らげる)
  • ノスカピン塩酸塩水和物(咳を和らげる)
  • カフェイン水和物(痛みを和らげる成分のはたらきを助ける)
  • アスコルビン酸(風邪のときに消耗しやすいビタミンを補給する)

【効能・効果】
かぜの諸症状(発熱、悪寒、頭痛、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、せき、のどの痛み、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和

【ポイント】
  • 熱・痛み・咳・鼻水とあらゆる症状をカバーできる総合の風邪薬です。
  • 1日2回の服用でOK。忙しくて何回も飲むのが手間なときに。
  • 咳止め成分として、ジヒドロコデインリン酸塩の代わりにノスカピンが使われています。




 ②パイロンS/塩野義製薬


【成分】
  • アセトアミノフェン(解熱・鎮痛作用)
  • d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(くしゃみ、鼻水、鼻づまりを和らげる)
  • デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(咳を和らげる)
  • ノスカピン(咳を和らげる)
  • ナンテンジツ乾燥エキス(咳を和らげる)
  • カンゾウエキス末(痰を和らげる)
  • グアヤコールスルホン酸カリウム(痰を和らげる)
  • 無水カフェイン(痛みを和らげるはたらきを助ける)

【効能・効果】
かぜの諸症状(のどの痛み、せき、たん、鼻みず、鼻づまり、くしゃみ、悪寒、発熱、頭痛、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和

【ポイント】
  • 熱・痛み・咳・鼻水とあらゆる症状をカバーできる総合の風邪薬です。
  • 1日3回タイプ。
  • 咳止め成分として、ジヒドロコデインリン酸塩の代わりにデキストロメトルファン、ノスカピンが使われており、さらに咳や痰を和らげる生薬成分が配合されています。咳・痰がつらいときに。


③パブロン50錠・顆粒/大正製薬


【成分】
  • アセトアミノフェン(解熱・鎮痛作用)
  • グアヤコールスルホン酸カリウム(痰を和らげる)
  • 麦門冬湯乾燥エキス(のどの乾燥を潤して痰を切れやすくし、咳をしずめる)

【効能・効果】
かぜの諸症状(のどの痛み、発熱、悪寒、頭痛、関節の痛み、筋肉の痛み、たん)の緩和

【ポイント】
  • 鼻水、くしゃみ、鼻づまりを抑える成分は入っていません。熱や痛み、咳メインの風邪のときに。
  • 1日3回タイプ。
  • 錠剤、顆粒の2種類あります。






④ベンザ調薬A/武田薬品


【成分】
  • アセトアミノフェン(解熱・鎮痛作用)
  • ナンテンジツエキス(咳を和らげる)
  • キキョウエキス(痰を和らげる)
  • ショウキョウエキス(健胃作用、発汗を促し、熱を下げる助けをする)
  • チンピエキス(健胃作用、咳・痰を和らげる助けをする)

【効能・効果】
かぜの諸症状(のどの痛み、悪寒、発熱、頭痛、せき、たん、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和

【ポイント】
  • 鼻水、くしゃみ、鼻づまりを抑える成分は入っていません。熱や痛み、咳メインの風邪のときに。
  • 1日3回タイプ。




以上、授乳中でも飲むことのできる市販の風邪薬4製品をご紹介しました。

それでもやはり薬を飲むのは心配・・・という方は、授乳の直前か直後にお薬を飲むことをおすすめします。

また、「してはいけないこと」や「相談すること」に授乳の記載があるような製品をどうしても飲みたいという方は、(メーカーによっても案内が異なるようですが)お薬を飲んでから24時間は授乳をさけることをお願いしています。

赤ちゃんのためにもお母さんの体調管理は大切ですよね。市販薬に不安がある場合や、なかなか体調に合ったものがないという場合には、病院から処方されるお薬のほうが使える種類も増えるので、病院を受診して相談してみてください。


ブログアーカイブ

ブログランキング

ブログランキングに参加中です。クリックしていただけると、とても励みになります。


くすり・薬学ランキング

注目の投稿

パブロン風邪薬シリーズの違いを比較してみました

今回の記事は自分のための備忘録の意味が大きいです。 風邪をひいたとき、「私は〇〇を買う」という好みが、皆さんあるのではないかと思います。実は、私はこれまでパブロン派ではなく、(別に嫌いというわけではなかったのですが)あえてパブロンを購入することもなかったんですね。...

QooQ