寒くなってきましたね。毎年この時期になると、風邪関連の相談を受ける機会が多くなります。
のどの痛み、熱、咳、鼻水・・・こういった症状に対応できる市販薬は数多くありますが、高血圧や糖尿病など、持病のある方はとくに選ぶのが難しいと感じるのではないでしょうか。そうした場合は店員・薬剤師に質問するのが一番ですが、「なかなか声をかけにくくて・・・」という方のために、今回は「咳」の症状に注目して、選び方のポイントをお話したいと思います。
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お薬の説明書「添付文書」に目をとおしてみましょう
別の記事を読んでくださった方には同じことの繰り返しになりますが、市販薬の箱の中には、お薬と一緒に「添付文書」と呼ばれるお薬の説明書が入っています。そこにはお薬を安全に使っていただくための「使用上の注意」という項目があって、さらに【してはいけないこと】、【相談すること】という項目に分かれています。
咳止め薬の添付文書を見てみると、高血圧や糖尿病といった持病をお持ちの方の服用について【相談すること】に書かれている場合がありますので、注意が必要です。
【相談すること】という名前のとおり、絶対に禁止というわけではありません。
たとえば、たとえば血圧・血糖値が普段から安定している方で、常にモニターできる方(異常があればすぐに中止できる方)が咳の症状のある間だけ、一時的に服用することは許容できるかと思いますが、体調変化には注意する必要があります。
今回は、【相談すること】に高血圧や糖尿病の記載がなく、高血圧や糖尿病をお持ちの方でも安心して飲むことのできる製品をいくつかご紹介します。
「相談すること」に高血圧や糖尿病の記載がある成分
下記の成分が含まれている製品には、使用上の注意の「相談すること」に、
「次の人は服用前に意思、薬剤師又は登録販売者に相談すること
・次の診断を受けた人
高血圧、糖尿病・・・」
と書かれています。
高血圧・糖尿病
- dl-メチルエフェドリン塩酸塩
- dl-メチルエフェドリンサッカリン塩
- 塩酸トリメトキノール
- 塩酸メトキシフェナミン
- マオウ
※交感神経を刺激する作用があるため、血圧上昇、心拍数増加などの作用をもたらすことがあります。また、肝臓のグリコーゲンを分解して血糖値を上昇させる作用があります。
高血圧のみ
- グリチルリチン酸等を1日最大配合量がグリチルリチン酸として40mg以上又は甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)含む製品
※グリチルリチン酸等を大量にとると、体内にナトリウムがたまり、反対にカリウムが外へ出ていくことでむくみなどが起こり、高血圧を悪化させる場合があります。
糖尿病のみ
- ジメモルファンリン酸塩
※耐糖能の異常がみられる場合があります。
※以前はジメモルファンリン酸塩を含む市販薬がありましたが、現在は販売中止になったようで、見つかりませんでした。
選ぶポイント「成分」「形」「服用回数」
以上のことから、主に次の点に注意して選ぶことになります。
- 気管支拡張成分dl-メチルエフェドリン塩酸塩が入っていない(高頻度で含まれているため注意)
成分について考えつつ、お薬の「形」としてどういったタイプを選ぶか? ということも、選ぶポイントになります。さらには1日3回飲む必要があるのか、1日2回でいいのか。反対にもっと多く飲むことができるのか、といったことも考える必要がありますね。
錠剤/カプセル
- メリット:味を感じにくく、飲みやすい。持ち運びに便利。
- デメリット:1日2回~3回服用なので、夜中に効果が切れてしまう場合も。
シロップ
- メリット:1日6回まで服用できる製品あり。夜中に咳込んで眠れない場合などに追加で服用可。
- デメリット:味がおいしくない場合もあり。大きいボトルだと持ち運びに不便。分包されたシロップの製品もあり(今回ピックアップした製品にはありません)。
高血圧や糖尿病でも飲める市販の咳止め薬
上記の選ぶポイントを参考に、次に具体的な商品名を3つほどご紹介します。
①コンタックせき止めダブル持続性/gsk
【成分】
- デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(咳を和らげる)
- ジプロフィリン(気管支を広げる)
【効能・効果】
せき・たん
【ポイント】
- カプセル
- 1日2回服用 → お昼に飲めない方にはおすすめ。
- デキストロメトルファンは、病院から処方される「メジコン」と同じ成分です。
- 以前販売されていた「コンタックせき止めST」という製品から、リゾチーム塩酸塩という成分が削除されたものがこちらの製品です。パワーアップしたようなパッケージに変更になっていますが、成分的には3成分→2成分へと、よりシンプルな構成になっています。
グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン 2017-04-03
②新ブロン液エース/エスエス製薬
【成分】
- ジヒドロコデインリン酸塩(咳を和らげる)
- グアイフェネシン(痰を和らげる)
- クロルフェニラミンマレイン酸塩(アレルギー性の咳を和らげる)
- 無水カフェイン(ほかの成分のはたらきを助ける)
【効能・効果】
せき、たん
【ポイント】
- シロップ
- 1回10mL(成人)を1日3回服用。症状によって4時間以上あけて、1日6回まで服用可 → 枕元に置いておくことで、夜中の咳込みなど、効果が切れてしまったときにも追加で対処できます。
- 今回ピックアップした製品のなかで唯一、咳止めとして「ジヒドロコデインリン酸塩」を使っています。デキストロメトルファンやジメモルファンリン酸塩より効果は高いので、咳がひどくてどうしても止めたいときにはおすすめです。一方、眠気や便秘などの副作用や、呼吸抑制のリスクがあるため、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、肥満症などがある方は、避けたほうがいいと思います。
③エスエスブロン液L/エスエス製薬
【成分】
- デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(咳を和らげる)
- グアイフェネシン(痰を和らげる)
- クロルフェニラミンマレイン酸塩(アレルギー性の咳を和らげる)
- 無水カフェイン(ほかの成分のはたらきを助ける)
【効能・効果】
せき、たん
【ポイント】
- シロップ
- 1回5mLを1日3回服用。症状によって4時間ごとに、1日6回まで服用可 → 枕元に置いておくことで、夜中の咳込みなど、効果が切れてしまったときにも追加で対処できます。
- 1回量と咳止め成分以外は②の新ブロン液エースと同じです。こちらには咳止めとして「デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物」が使われています。ジヒドロコデインリン酸塩に比べると効果はマイルドになりますが、副作用もマイルドなので、便秘になりやすい方は、こちらのほうがいいかもしれません。
※以前は、高血圧の方でも飲める咳止め薬(糖尿病の方は注意が必要)として、大正製薬から発売されている「新パブロンせき止め液」(咳止め成分として、ジメモルファンリン酸塩配合)を紹介していましたが、こちらの製品は現在販売中止になったようです。
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