風邪で病院に行くと処方される薬に、PL配合顆粒というものがありますが、これは「処方する派」の医師と、「処方しない派」の医師がすっぱり分かれる薬だと、個人的には感じています。
これまでにPL配合顆粒を処方されたことがあり、「風邪のときはいつもこれを飲んでいる」というお客さまから、「これを飲むとすぐに治るんだけど、同じもの売ってる?」と質問を受けましたので、PL配合顆粒とその市販薬についてまとめてみたいと思います。
PL配合顆粒とはどんな薬?
PL配合顆粒は1962年に販売開始された、総合感冒薬です。一応「総合感冒薬」に分類されますが、市販されている総合感冒薬のイメージとはちがい、のどの痛み、熱、鼻水、咳、痰・・・とあらゆる症状を抑える成分が入っているわけではありません。
飲んだ印象は「苦い粉薬」。ジェネリックに同じ成分を含む錠剤「ピーエイ配合錠」があります。
PL配合顆粒の効能・効果
PL配合顆粒の添付文書によると、効能・効果は次のようになっています。【効能・効果】
感冒若しくは上気道炎に伴う下記症状の改善及び緩和
鼻汁、鼻閉、咽・喉頭痛、頭痛、関節痛、筋肉痛、発熱
(PL配合顆粒添付文書より)
「咳」「痰」の記載がないことがわかるかと思います。
PL配合顆粒には、咳や痰を抑える成分が入っていません。痛み・熱・鼻症状がつらい方向けの薬です。ですので、オールマイティな総合感冒薬とはいえません。
風邪薬すべてにいえることですが、風邪の原因そのものを治す薬ではなく、薬が効いている間の症状を和らげる薬です。
PL配合顆粒の成分
PL配合顆粒に含まれる成分は以下の4つです(含量は1回量1gあたり)。- サリチルアミド 270mg (解熱・鎮痛作用)
- アセトアミノフェン 150mg (解熱・鎮痛作用)
- 無水カフェイン 60mg (不快感の除去、鎮痛作用を助ける)
- プロメタジンメチレンジサリチル酸塩 13.5mg (抗ヒスタミン成分、サリチルアミド・アセトアミノフェンの鎮痛作用を助ける)
解熱鎮痛成分であるサリチルアミドとアセトアミノフェンが、熱や痛みを抑えます。
無水カフェインには中枢神経を興奮させる作用があるので、眠気やだるさなど、風邪にともなう不快感を和らげます。また、他の成分が痛みを抑える作用を、助けるはたらきもあります。
抗ヒスタミン成分であるプロメタジンメチレンジサリチル酸塩は、鼻水・くしゃみ・鼻づまりを和らげます。また、(無水カフェインが入っていても)副作用で「眠気」があるのですが、実際に飲んでいる方のなかには「これを飲むとよく眠れていい」と喜んでいる方もいます。仕事中はつらいですが。
PL配合顆粒の使い方
効果の持続時間が長い薬ではないため、使い方として、添付文書上は「1回1g」を「1日4回」となっていますが、病院からは1日3回で処方される場合が多く、1日4回というのは、あまり見たことがありません。PL配合顆粒を使わない派の医師もいる
私がはたらく薬局は、特定の病院の前にある薬局ではないので、いろいろな病院からの処方せんを受け付けています。そのため、医師によって処方のクセというか、薬の好みというか、同じ症状でも薬の出し方はさまざまなのだなぁと勉強になります。
風邪に対して、
- PL配合顆粒
- アズノールうがい液
のような、シンプルな処方をする医師もいれば、
- ムコダイン
- ムコソルバン
- トランサミン
- カロナール
のように、患者さんが訴える症状のひとつひとつに合った薬を処方する医師もいます。
それぞれのポリシーがあって処方を決めているのだと思いますが、ある日患者さんからこんなことをいわれました。
「〇〇先生がね、いまどきPL配合顆粒を処方するなんて信じられないっていうの。自分は処方しないって。よくない薬なの?」
〇〇先生のポリシーでは、PL配合顆粒を処方しないことになっているようです。
実際に、PL配合顆粒について〇〇先生と語り合ったことはないので、よくわかりませんが、処方せんを見ていると、〇〇先生のほかにもたしかに「PL配合顆粒」を処方しない医師が一定数いるということに気が付きます。
PL配合顆粒は危険な薬なのか?
なぜ、PL配合顆粒を処方しない派の医師がいるのか、その理由について考えてみました。
PL配合顆粒には、実は「使ってはいけない人」という意味の「禁忌」というものが設定されています。いくつかありますが、とくに見落としがちというか、注意が必要なのは、次の方ではないかと思います。
- 消化性潰瘍のある方
- 緑内障のある方
- 前立腺肥大症のある方
こういった持病をお持ちの方がPL配合顆粒を飲んだ場合、どのような影響があるのか、見てみましょう。
①消化性潰瘍のある方
「痛み止めを飲んだら胃がムカムカした」という経験をお持ちの方は多いのではないかと思います。PL配合顆粒も解熱鎮痛成分を含んでいますので、胃粘膜を荒らし、消化性潰瘍を悪化させる恐れがあります。②緑内障のある方
プロメタジンメチレンジサリチル酸塩の作用により、眼圧が上がり、緑内障を悪化させる恐れがあります。③前立腺肥大のある方
プロメタジンメチレンジサリチル酸塩の作用により、尿が出にくくなる恐れがあります。また、副作用として眠気・めまいなどがありますので、服用中の自動車の運転も禁止されています。
以上のことから、PL配合顆粒がすべての人にたいして「危険」というわけではなく、ある持病を持った方に使えない、副作用を知って正しく使わないとダメといった、PL配合顆粒の性質(ほかの薬にもいえることですが)から、処方をしない医師がいるのではないかと思います。実際、緑内障や前立腺肥大があってもご自身で把握していない場合もあると思いますので。
PL配合顆粒と同じ成分を含む市販薬
PL配合顆粒と同じ成分を含む市販薬には、シオノギヘルスケアから出ている「パイロンPL顆粒」があります。名前も似ていますね。
パイロンPL顆粒の成分
パイロンPL顆粒に含まれる成分は以下の4つです(含量は1回量0.8gあたり)。- サリチルアミド 216mg (解熱・鎮痛作用)
- アセトアミノフェン 120mg (解熱・鎮痛作用)
- 無水カフェイン 48mg (不快感の除去、鎮痛作用を助ける)
- プロメタジンメチレンジサリチル酸塩 10.8mg (抗ヒスタミン成分、サリチルアミド・アセトアミノフェンの鎮痛作用を助ける)
処方薬のPL配合顆粒は1包1gであるのにたいして、市販薬のパイロンPL顆粒は1包0.8gなので、1回あたりの成分量も80%に減量されています。
パイロンPL顆粒の使い方
添付文書によると、1回1包(0.8g)を1日3回となっています。服用回数としても、処方薬のPL配合顆粒より少なく設定されています。また、パイロンPL顆粒の添付文書を見てみると、【相談すること】の欄に、排尿困難のある人、胃・十二指腸潰瘍、緑内障の診断を受けた人などの記載がありますが、これは上記のような理由からです。
とくに持病がなく、これまで問題なくPL配合顆粒が使えていた方は、市販薬として入手できるようになって便利になりましたね。
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