高血圧や糖尿病があっても、市販の風邪薬を飲んで大丈夫?

2018/11/16

高血圧 風邪

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風邪をひいてしまったとき、わざわざ病院へ行かずに、市販薬を買って自分で対処しているという方は多いのではないかと思います。とはいえ市販の風邪薬は何種類もあり、とくに持病をお持ちの方は、どれなら飲んでいいの? と悩んでしまうのではないでしょうか。

風邪薬を選ぶ基準はいろいろありますが、とくに持病のある方は注意が必要な場合があります。ドラッグストアの店頭でよく質問を受けるのは、「血圧の薬を飲んでいるんだけど、一緒に飲める風邪薬ある?」とか、「糖尿病なんだけど、市販の風邪薬を飲んでもいい?」などが多いです。

記事の後半で、高血圧や糖尿病の持病のある方でも飲める市販の風邪薬について、具体的な商品名を4つご紹介していますので、お急ぎの方はとばして後半からお読みください。

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高血圧や糖尿病があっても飲める市販の鼻炎薬はどれ?

高血圧や糖尿病があっても飲める市販の咳止め薬はどれ?

高血圧や糖尿病のある人は、市販の風邪薬を飲めないの?


市販薬を買うと、箱のなかには「添付文書」と呼ばれる説明書が入っています。そこには【使用上の注意】という項目があって、そのなかでさらに、

  • してはいけないこと
  • 相談すること

という2つの項目に分かれています。

具体例があったほうがわかりやすいと思いますので、メジャーと思われる「ルル」シリーズの、ベーシックタイプ「新ルル-A錠s」の成分と使用上の注意を見てみます。

新ルル-A錠s


【成分】
  • アセトアミノフェン
  • クレマスチンフマル酸塩
  • ジヒドロコデイン塩酸塩
  • ノスカピン
  • dl-メチルエフェドリン塩酸塩
  • グアヤコールスルホン酸カリウム
  • 無水カフェイン
  • ベンフォチアミン

【使用上の注意】
してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用・事故が起こりやすくなります)
1.次の人は服用しないで下さい。
(1)本剤又は本剤の成分によりアレルギー症状を起こしたことがある人
(2)本剤又はほかのかぜ薬、解熱鎮痛薬を服用してぜんそくを起こしたことがある人

(中略)

相談すること
1. 次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談して下さい。
(1)医師又は歯科医師の治療を受けている人
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人
(3)高齢者
(4)薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人
(5)次の症状のある人
   高熱、排尿困難
(6)次の診断を受けた人
   甲状腺機能障害、糖尿病、心臓病、高血圧、肝臓病、腎臓病、胃・十二指腸潰瘍、緑内障、呼吸機能障害、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、肥満症

(以下略)

(新ルル-A錠s 添付文書より引用)



【してはいけないこと】の欄には、同じ成分や似た成分でアレルギーを起こしたことのある人は飲んではいけませんとか、アスピリン喘息の人は飲んではいけませんとか、その名のとおり、禁止されていることが書かれています。

一方、新ルル-A錠sの場合、持病にかんすることは、【してはいけないこと】の欄ではなく、【相談すること】の欄に書かれています。

新ルル-A錠sの場合、なぜ【相談すること】の欄に糖尿病や高血圧の記載があるのかというと、成分として含まれるdl-メチルエフェドリン塩酸塩が関係しています。この成分には交感神経を刺激する作用があるため、血圧上昇、心拍数増加などの作用をもたらすことがあります。また、肝臓のグリコーゲンを分解して血糖値を上昇させる作用があります。

そのため、たとえば血圧・血糖値が普段から安定している方で、常にモニターできる方(異常があればすぐに中止できる方)が風邪症状のあるあいだだけ一時的に服用することは許容できるかと思いますが、体調変化には注意する必要があります。

風邪薬によく含まれるdl-メチルエフェドリン塩酸塩の場合、上記のように【相談すること】として高血圧や糖尿病の方に注意喚起されていますので、積極的におすすめはしませんが、体調によっては様子を見ながら服用することもできます。一方で、鼻炎薬などに含まれる塩酸プソイドエフェドリン(血圧上昇・血糖値上昇作用あり)という成分は高血圧や糖尿病などの持病のある方に禁忌なので、服用することはできません。

高血圧の人が注意すべき主な成分

  • dl-メチルエフェドリン塩酸塩
  • dl-メチルエフェドリンサッカリン塩
  • マオウ
  • グリチルリチン酸
  • カンゾウ
  • 塩酸プソイドエフェドリン ←禁忌

糖尿病の人が注意すべき主な成分

  • dl-メチルエフェドリン塩酸塩
  • dl-メチルエフェドリンサッカリン塩
  • マオウ
  • ジメモルファンリン酸塩
  • 塩酸プソイドエフェドリン  ←禁忌


高血圧や糖尿病のある人でも安心して飲める、市販の風邪薬はないの?


上で挙げたような高血圧・糖尿病の人が注意すべき成分が入っていないものを選べば、安心して服用することができます。

具体的な商品名を4つご紹介します。


①ベンザ調薬A末

タケダから販売されている製品で、「生活習慣病の方のお体の状態を考えたかぜ薬」とあるように、dl-メチルエフェドリン塩酸塩を含まず、血圧や血糖値には影響しません。

【成分】
  • アセトアミノフェン(解熱、鎮痛作用)
  • ナンテンジツエキス(咳を和らげる)
  • キキョウエキス(痰を和らげる)
  • ショウキョウエキス(健胃作用、発汗を促し熱を下げる助けをする)
  • チンピエキス (健胃作用、咳・痰を和らげる助けをする)

【効能】
かぜの諸症状(のどの痛み、悪寒、発熱、頭痛、せき、たん、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和


ちなみに、鼻水やくしゃみを抑える成分は入っていません。生薬が中心なので、一般的な風邪薬でよくみられる、眠気・便秘・口の乾き・排尿困難などの副作用はありません。

また、お店で探そうとすると、置いてあるお店ばかりではないので、見つけるのが大変かもしれません。ルルとかパブロンとか、CMでもよく流れているベンザブロックシリーズなどに比べるとマイナーな製品かと思います。

私がはたらくドラッグストアにも以前は置いてありましたが、売れ行きがよくなかったのか、いつからか定番の棚からはずれてしまいました。高血圧・糖尿病の方に安心しておすすめできる市販の風邪薬ってなかなかないので、残念です・・・。


②パブロン50顆粒/錠

大正製薬から販売されている製品です。商品説明には「眠くなったり、尿が出にくくなる抗ヒスタミン薬、便秘を起こしやすいジヒドロコデインリン酸塩、糖尿病や高血圧に影響を与えるdl-メチルエフェドリン塩酸塩が入っていません」とあります。

本当かどうかわかりませんが、以前、製品名にある「50」というのは「50代以上の方におすすめ」という意味だと聞いたことがあります。50代以上になると、前立腺肥大が出て尿が出にくい方が増えるし、糖尿病や高血圧など生活習慣病をお持ちの方も増えるので、そうした世代におすすめしやすいということです。

【成分】
  •  アセトアミノフェン(解熱・鎮痛作用)
  • グアヤコールスルホン酸カリウム(痰を和らげる)
  • 麦門冬湯乾燥エキス(のどの乾燥を潤して痰をきれやすくし、咳をしずめる)

【効能】
かぜの諸症状(のどの痛み、発熱、悪寒、頭痛、関節の痛み、筋肉の痛み、たん)の緩和


こちらも鼻水・くしゃみを和らげる成分は入っていません。
メーカーさん曰く、効き目よりも「安心感」をコンセプトに作られた商品だそうです。上記①のベンザ調薬A末と同じく、眠気・便秘・口の乾き・排尿困難などの副作用をもたらす成分は入っていません。顆粒と錠剤の2タイプあります。

こちらは私がはたらくドラッグストアでも取り扱いがあり、そこそこ動きがあります。以前は麦門冬湯の代わりに、咳止めとしてデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物が入っていたのですが、リニューアルしたようです。






③パブロンSゴールドW錠/微粒

こちらも大正製薬のパブロンシリーズのひとつです。大正製薬さんの勉強会に出たときの受け売りですが、パブロンSゴールドWは、風邪症状に対して医師が処方するときの考え方に近い、シンプルな処方になっているそうです。そのなかでも、去痰成分を2種類配合することで、ウイルス・細菌から身体を守る気道粘膜バリアのはたらきを補う効果があります。

【成分】
  • アンブロキソール塩酸塩(痰を和らげる)
  • L-カルボシステイン(気道粘液・粘膜を正常な状態に近づける)
  • ジヒドロコデインリン酸塩(咳を和らげる)
  • アセトアミノフェン(解熱・鎮痛作用)
  • クロルフェニラミンマレイン酸塩(くしゃみ、鼻水、鼻づまりを和らげる)
  • リボフラビン(風邪のときに消耗しやすいビタミンを補給する)
【効能】
かぜの諸症状(のどの痛み、せき、鼻みず、鼻づまり、くしゃみ、たん、頭痛、発熱、悪寒、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和


血圧や血糖値を上げる恐れのあるdl-メチルエフェドリン塩酸塩が入っていないため、高血圧や糖尿病をお持ちの方でも安心して服用できます。

上記①ベンザ調薬A末や、②パブロン50顆粒/錠が、主に解熱鎮痛剤+漢方(生薬)という構成で、「効き目はマイルドだけど、副作用が少なく安心して服用できる」というコンセプトで作られた製品であるのに対し、こちらのパブロンSゴールドW錠/微粒はdl-メチルエフェドリン塩酸塩を除いているものの、あとは一般的な総合感冒薬に含まれるような西洋薬で構成されているため、効き目もしっかりしています。

ベンザ調薬A末やパブロン50顆粒/錠には含まれていない、鼻水・くしゃみ・鼻づまりを和らげる抗ヒスタミン成分も入っています。その分、眠気や便秘、排尿困難などの副作用は出てしまう可能性はあります。血糖値や血圧への影響を心配する方で、眠気は出てもいいから効き目もしっかりしたものを選びたいという方は、パブロンSゴールドW錠/微粒をおすすめします。






④新エスタック「W」

エスエス製薬から販売されているエスタックシリーズのひとつです。授乳中でも飲める風邪薬としてちまたで有名な製品です。


【成分】
  • アセトアミノフェン(解熱・鎮痛作用)
  • サリチルアミド(解熱・鎮痛作用)
  • クロルフェニラミンマレイン酸塩(くしゃみ、鼻水、鼻づまりを和らげる)
  • ノスカピン塩酸塩水和物(咳を和らげる)
  • カフェイン水和物(痛みを和らげるはたらきを助ける)
  • アスコルビン酸(風邪のときに消耗しやすいビタミンを補給する)

【効能・効果】
かぜの諸症状(発熱、悪寒、頭痛、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、せき、のどの痛み、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和


上記③のパブロンSゴールドWと、タイプとしては似ていまして、西洋薬で構成されているので効き目はしっかりしています。血圧や血糖値を上げる恐れのあるdl-メチルエフェドリン塩酸塩が入っていないことから、高血圧や糖尿病をお持ちの方でも安心して服用できます。また、抗ヒスタミン成分が入っているため、鼻水・くしゃみ・鼻づまりにも効果があります。

大きな違いは「咳止め成分」と「服用回数」です。

パブロンSゴールドWに含まれている咳止め成分ジヒドロコデインリン酸塩は、総合感冒薬などによく配合されている成分です。効果は高いですが、便秘や眠気、口の渇きといった副作用がみられることがあります。

一方、新エスタック「W」に含まれる咳止め成分は、ジヒドロコデインリン酸塩ではなくノスカピンなので、効果としてはややマイルドな印象ですが、副作用も少ないかと思います。また、こちらは1日2回のタイプなので、1日3回は飲みにくいという方にはおすすめですね。



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