尿検査前に市販の風邪薬を飲んでも大丈夫? 検査値に及ぼす影響を調べてみました。

2018/12/07

風邪

t f B! P L


尿検査の前に風邪薬を飲んでもいいの?


ある日、お客さまから相談を受けました。

「子供が風邪をひいていて、パブロンを飲ませているんだけど、明日は学校の健康診断なの。尿検査があるんだけど、パブロン飲むのをやめたほうがいいかしら?」

そういえば、「尿検査の前に風邪薬を飲んでいいのか」といった質問を受けたのはこれがはじめてでした。なので、焦りました・・・
頭のなかで考えたことは、

  • 尿検査前にビタミンを控えたほうがいい、ということはなんとなく知っていた。(理由はよくわかっていないけれど 汗)
  • ビタミンを含むパブロンもあったはず・・・

ということで、お客さまにはまず、どのパブロンを飲んでいるのか確認しました。
成分を見ると、ビタミンB1、B2が含まれていました。

念のため、メーカーのほうにもパブロンを尿検査前に飲んで差し支えないのか問い合わせましたが、こうした質問を受けるのははじめてとのことで、「わからない」。「だが、禁止との記載もない」との回答でした。

同じ成分を含む医療用医薬品の添付文書(薬の説明書)を確認したところ、ビタミンB2のほうに「尿を黄変させ、臨床検査値に影響を与えることがある」と記載されていたため、お客さまには念のため、尿検査前に風邪薬を飲むならパブロンではなく、ビタミンが入っていないタイプをおすすめしました。



風邪薬の成分が検査値に与える影響について、医療用医薬品の添付文書を見てみると・・・


市販薬の添付文書は、一般のお客さま向けにわかりやすく書かれています。その分、情報量としてはやはり医療用医薬品の添付文書にかないません。そこで、市販の風邪薬に使われる主な成分について、対応する医療用医薬品の添付文書を確認し、尿検査などの検査値に影響するのかどうか、調べてみました。

解熱鎮痛成分

成分名対応する医療用医薬品検査値への影響
アセトアミノフェンカロナール記載なし
エテンザミドエテンザミド記載なし
アスピリンアスピリン記載なし
イブプロフェンブルフェン記載なし
イソプロピルアンチピリンヨシピリン記載なし


咳止め成分

成分対応する医療用医薬品検査値への影響
ジヒドロコデインリン酸塩ジヒドロコデインリン酸塩記載なし
ノスカピンノスカピン記載なし
デキストロメトルファン臭化水素酸塩メジコン記載なし
チペピジンヒベンズ酸塩アスベリン

※添付文書には「本剤の代謝物により、赤味がかった着色尿がみられることがある」とありますが、メーカーに確認したところ、着色しても検査値への影響はないとのことです。

気管支拡張成分

成分対応する医療用医薬品検査値への影響
dl-メチルエフェドリン塩酸塩dl-メチルエフェドリン塩酸塩記載なし
プソイドエフェドリン塩酸塩配合錠のみ)ディレグラ配合されたフェキソフェナジンによる、
アレルギー検査への影響のみ


去痰成分

成分対応する医療用医薬品検査値への影響
ブロムヘキシン塩酸塩ビソルボン記載なし
カルボシステインムコダイン記載なし
アンブロキソール塩酸塩ムコソルバン記載なし
グアイフェネシン注射のみカルチノイド、褐色細胞腫の検査等に
影響の記載
グアヤコール酸カリウム外用のみ


鼻炎成分

成分対応する医療用医薬品検査値への影響
クロルフェニラミンマレイン酸塩ポララミン記載なし
マレイン酸カルビノキサミンなし
ジフェニルピラリン塩酸塩注射のみ記載なし
クレマスチンフマル酸塩タベジール記載なし
メキタジンゼスラン腎障害のある方に対する長期投与
例で記載あり
ベラドンナ総アルカロイドなし
ヨウ化イソプロパミドなし


消炎成分

成分対応する医療用医薬品検査値への影響
リゾチーム塩酸塩なし
トラネキサム酸トランサミン記載なし


そのほか

成分対応する医療用医薬品検査値への影響
無水カフェイン無水カフェイン記載なし
チアミン硝化物(ビタミンB1硝酸塩)配合剤のみ記載なし
リボフラビン(ビタミンB2)ビスラーゼ尿を黄変させ、臨床検査値に影響
を与えることがある
ビスイブチアミン(ビタミンB1誘導体)なし
アスコルビン酸(ビタミンC)アスコルビン酸各種の尿糖検査で、尿糖の検出を
妨害することがある。各種の尿・
便潜血反応検査で、偽陰性を呈することがある。
ヘスペリジンなし



市販の風邪薬に含まれる成分で、注意するのは「ビタミンB2」と「ビタミンC」


以上のことから、学校や会社で毎年受けるような一般的な健康診断(尿検査)の前に注意したい成分は、「ビタミンB2」と、「ビタミンC」であることがわかりました。

具体的に、薬の説明書にどのような記載があるのか、見ていきたいと思います。

ビタミンB2に関して

臨床検査結果に及ぼす影響
尿を黄変させ、臨床検査値に影響を与えることがある。

<参考>
臨床検査値に影響を与えることが報告されている検査項目
  • 尿蛋白(試験紙):偽陰性を示すことがある。
  • 尿ポルフィリン体:偽陰性を示すことがある。
  • ウロビリン体、ポルフィリン体蛍光測定法:ビタミンB2剤の混入は、有機溶剤で分離抽出不能で測定不能となる。
(ビタミンB2を主成分とする医療用医薬品「強力ビスラーゼ末1%」のIFより引用)


ビタミンCに関して

臨床検査結果に及ぼす影響
(1)各種の尿検査で、尿糖の検出を妨害することがある。[アスコルビン酸(ビタミンC)による。]
(2)各種の尿試験紙法による尿検査(潜血、ビリルビン、亜硝酸塩)・便潜血反応検査で、偽陰性を呈することがある。[アスコルビン酸(ビタミンC)による。]

(解説)
(1)本剤中のアスコルビン酸は強力な還元作用を持つため、尿糖試験紙のブドウ糖試験部分と反応し偽陰性の反応になるおそれがあるとの報告がある。
(2)尿試験紙法は、投与薬物による高度の着色尿は肉眼比色を不可能にし、高度の還元性物質(アスコルビン酸等)含有尿は酸化還元反応に基づくブドウ糖、潜血、ビリルビン、亜硝酸塩を偽陰性化させる。便検査における医薬品の影響では、偽陰性結果をもたらす薬剤としてアスコルビン酸がよく知られている。

(ビタミンCを含む医療用医薬品「シナール配合錠/シナール配合顆粒」のIFより引用)


学校や会社の健康診断で調べる一般的な尿検査項目には「尿糖」「尿蛋白」「尿潜血」が含まれるかと思います。これらは腎臓病や糖尿病、甲状腺疾患などを早く発見するための大切な項目ですが、ビタミンの影響で「偽陰性」つまり、本当は「病気かもしれない」のに「病気ではない」と出てしまうことで、病気の発見の遅れにつながります。

今回調べてみて、市販の風邪薬なら大丈夫と思わず、成分を選ぶことが大切なのだとあらためて感じました。



健康診断の前に市販の風邪薬を飲むときに、注意したいこと


とはいっても、健康診断が迫っているからといって、風邪でつらいときは、症状を和らげるために薬を飲みたいときもありますよね。そこで、対策としては2つあります。

①検査に影響する「ビタミンB2」「ビタミンC」の入っていない風邪薬を選ぶ

はじめから尿検査に影響する成分をさけてしまう方法です。これなら健康診断の当日まで飲むことができます。実際、「ビタミンB2」や「ビタミンC」を含まない風邪薬もたくさんあります。パッケージには、「ビタミンB2」はリボフラビン、「ビタミンC」はアスコルビン酸と書かれている場合もありますので、注意が必要です。

②健康診断の2~3日前から、検査に影響する「ビタミンB2」「ビタミンC」をさける

ビタミンの影響が長引く場合もあるので、念のため2~3日前から避けていただいたほうが安心です(日本総合健診医学会「健診の上手な受け方(Q&A)」には、2日前より服用を控えるように記載がありました)。手持ちの風邪薬にビタミンを含むものしかない場合、健康診断の2~3日前までは飲んでいただいて大丈夫ですが、それ以降も症状が続くようでしたら、飲むのをやめるか、ビタミンを含まない風邪薬に切り替えることをおすすめします。


今回は、実際に受けた質問の内容から、「市販の風邪薬」にかぎって話をすすめてきましたが、

  • 市販のビタミン剤
  • 市販の口内炎内服薬
  • 病院から処方されるビタミン剤
  • 栄養ドリンク

などにも、「ビタミンB2」「ビタミンC」が含まれる場合がありますので、尿検査前には注意が必要です。




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