以前、調剤の仕事のほうで、降圧薬の処方箋を持ってきてくれた患者さんにお薬をわたしていたときのことですが、
「実は薬をしばらく切らしていて、血圧が180くらいまで上がっちゃったんだ」
という話を聞きました。
その方は仕事の都合でどうしても病院に行くことができなかったようです。「処方せんがないと薬もらえないんだよね?」と聞かれたのですが、現状では処方せんがないとお薬をわたすことができません。
「ドラッグストアでは処方せんなしで買える血圧を下げる薬ってないの?」と聞かれましたが、あいにく私のはたらくドラッグストアでは、血圧が高い方向けのトクホなどはありましたが、血圧を下げる市販薬の取り扱いはなかったので、そうお伝えしました。薬剤師としては、血圧が高い状態はよくないのだというお話をして、だから薬を切らさないように前もって受診してくださいとお話するしかありませんでした。
薬を切らさないように受診できるのが一番ですが、人それぞれの事情があるので、やはりどうしても受診できないこともあるのではないかと思います。そうしたときに、何か使えそうな市販薬がないか、調べてみました。
血圧を下げる効果のある市販薬
「高血圧に伴う症状(頭痛、肩こり、耳鳴りなど)」に効果のある市販薬ならば、漢方薬などでよく見かけますが、「高血圧」そのものに効果がある市販薬となると、ほとんどありません。私が調べたかぎりではたったひとつだけですが、「高血圧」に効果があるとされる市販薬が見つかりました。
米田薬品から販売されている「セルペロイシン錠」というお薬です。第1類医薬品になりますので、どこでも買えるというわけではありません。私のはたらくドラッグストアでは取り扱いがなく、またほかの店でも見かけたことはないので、ややマイナーな製品なのかなと思います。
セルペロイシン錠とはどんな薬?
「セルペロイシン錠」添付文書からの引用になりますが、効能・効果は次のようになっています。
【効能・効果】
- 本態性および腎性高血圧症
- 心臓機能障害あるいは大脳血行障害を伴う高血圧症
- 高血圧随伴症
- 動脈硬化の治療および予防
- 脳溢血・血管脆弱による出血予防
次に、成分を見てみます。
「セルペロイシン錠」の主成分である「ローウォルフィアセルペンチナ総アルカロイド」は、「ラウオルフィアセルペンチナ総アルカロイド」と表現されることもあるようです。
医療用の医薬品でも使われているのか見てみたところ、「アポプロン錠0.25mg」(成分:レセルピン)に関係していました。
アポプロン錠の成分であるレセルピンは、1952年にインド蛇木(Rauwolfia serpentina)の根から抽出・単離されたラウオルフィア・アルカロイドです。レセルピンに中枢鎮静作用と血圧降下作用があることがわかり、高血圧症の治療に使われるようになりました。アポプロン錠のインタビューフォーム(医薬品の詳しい説明書のようなもの)によると「レセルピンは、人で交感神経機能阻害作用が見出された最初の薬物で、その臨床作用が現代の高血圧症薬物療法の端緒となったという歴史がある。」とあり、いまではあまり処方で見かけなくなったお薬ですが、これまでの歴史を感じることができます。
以下、アポプロン錠インタビューフォームから作用機序の引用です。
レセルピンは、シナプス小胞へのカテコールアミンの取り込みを阻害し、シナプス小胞のノルアドレナリンを枯渇させる。その結果、交換神経終末でカテコールアミンが減少し、アドレナリン作動性シナプスでの興奮伝達が遅発的ならびに持続的に遮断され降圧作用を示す。
市販薬の「セルペロイシン錠」は、レセルピンそのものが含まれているわけではありませんが、(レセルピンがその成分として含まれる)ラウオルフィアセルペンチナ総アルカロイドを主成分とすることから、上記のようなはたらきで血圧を下げる効果があると考えられます。
セルペロイシン錠はどんな人をターゲットにしているのか?
明らかに血圧が高い方には病院を受診していただきたいですし、私自身「セルペロイシン錠」がどのようなレベルの高血圧の方をターゲットにしてるのかよくわからなかったので、メーカーに問い合わせてみました。
ですが、メーカーから具体的な回答は得られず、「病院にかかっている方はそちらに」といったお話でした。どれくらいの血圧の方に「セルペロイシン錠」を用いて、お薬を飲むことでどれだけ血圧を下げたかなど具体的なデータがあれば知りたかったのですが、教えていただけませんでした。
あくまでこれは私の考えですが・・・、たとえば血圧が高い状態が続いているのに、病院嫌いでどうしても行こうとしない方とか、普段は病院の薬をもらっているけれど、仕事の都合でそうしても受診できない方は、「セルペロイシン錠」の使用を検討してもいいのかなと思います。「セルペロイシン錠」は第1類医薬品ですので、まずは使用できるかどうかの確認が必要になります。販売店のほうに相談してみてくださいね。
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