眠くなりにくい市販の風邪薬の選び方

2018/12/05

風邪

t f B! P L

ほとんどの方が、これまでに一度は市販の風邪薬を飲んだ経験があるのではないでしょうか。

市販の風邪薬って眠くなりますよね。私は最近ではあまり風邪をひかなくなったのでしばらく風邪薬を飲んでいませんが、学生時代はよくお世話になっていまして、授業の内容と相まって知らないうちに意識を失っていたという経験があります。

店頭でも「眠くならない風邪薬ありますか?」という相談をよく受けます。学生さんはもちろん、仕事をされている方も眠くなって集中力が落ちてしまうと困りますよね。今日は「眠くなりにくい風邪薬」をテーマに書いています。




なぜ市販の風邪薬を飲むと眠くなるのか?


市販の風邪薬には、多くの場合、ひとつの製品にいくつかの成分が配合されています。具体的には、次のような成分で構成されています。

  • 熱・のどの痛み → 解熱鎮痛成分
  • 鼻水・くしゃみ・鼻づまり → 抗ヒスタミン成分
  • 咳・痰 → 鎮咳・去痰・気管支拡張成分
  • そのほか → ビタミン、カフェインなど

風邪をひいたときに見られる、熱やのどの痛み、鼻水、咳・・・あらゆる症状を和らげる成分が含まれています。

このなかでとくに眠気にかかわっている成分が「抗ヒスタミン成分」です。また、咳を和らげる成分で眠気が出ることもあります。

これら眠気の出る成分が含まれている製品には、添付文書の使用上の注意「してはいけないこと」の欄に、次にように書かれています。

服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください
(眠気等があらわれることがあります)

製品にこのように書かれていたら、ある程度の眠気が出るのだろうと考えられます。
反対に、このように書かれていない製品なら、眠気は出ても少ないか、まったく出ないのだろうと考えることができます。



抗ヒスタミン成分とは


抗ヒスタミン成分は、「ヒスタミン」という物質のはたらきを抑えることで、アレルギー症状を和らげます。そのため、鼻水・くしゃみ・鼻づまり、それから皮膚のかゆみなどに効果があり、市販薬では、風邪薬や鼻炎薬、じんましんの薬などに含まれています。これらの薬はいずれも副作用で眠くなります。その理由はヒスタミンのはたらきにあります。

ヒスタミンは鼻や皮膚に作用するとアレルギー反応を引き起こし、鼻水やかゆみの原因となるのですが、一方、脳では神経細胞を興奮させ、私たちの身体を覚醒させる作用があります。抗ヒスタミン成分は、その名のとおり、ヒスタミンのはたらきを抑えるのですが、はたらく場所によって、

鼻  → (ヒスタミンによる)アレルギーを抑える → 鼻水を抑える
皮膚 → (ヒスタミンによる)アレルギーを抑える → かゆみを抑える
脳  → (ヒスタミンによる)覚醒を抑える    → 眠気をもたらす

と、いろいろな作用をもたらします。逆に、この眠気の副作用を利用した製品もありまして、「ドリエル」などの商品名で有名な睡眠改善薬というものです。



抗ヒスタミン成分のちがい


抗ヒスタミン成分は、古くからあるタイプ(第一世代)と、比較的新しいタイプ(第二世代)があります。第一世代のほうが眠気などの副作用が出やすく、第二世代のほうが眠くなりにくいといわれています。一般的な市販の風邪薬に含まれているのは第一世代の抗ヒスタミン成分です。第二世代の抗ヒスタミン成分には、花粉症の薬として市販されている、アレグラ、アレジオン、クラリチンなどがあります。

風邪をひいて病院を受診すると、「どんな症状がつらいですか?」と聞かれることが多いかと思います。その答えをもとにして医師が、適切な成分を選び、処方を決めてくれます。
市販の風邪薬の場合、複数の成分が一緒になったものがひとつの製品として販売されていますが、病院から処方される薬の場合、多くはひとつの成分がひとつの製品として存在しているため(なかにはひとつの製品に複数の成分が配合されているもの=配合薬 もあります)、症状に合わせて必要な成分だけを、その人の体質(持病など)に合わせて副作用の出にくい適切な成分として、選ぶことができます。抗ヒスタミン成分に関しても、眠くなると困るという方には眠くなりにくいタイプを処方してくれます。

たとえば風邪の処方せんで、鼻水に対してアレグラが出されているのを見かけますが、市販の風邪薬では抗ヒスタミン薬としてアレグラの成分であるフェキソフェナジン塩酸塩が使われている製品は、いまのところありません。

市販の風邪薬によく使われている抗ヒスタミン成分は、クロルフェニラミンマレイン酸塩でしょうか。それから、「ストナ」シリーズなどに含まれるジフェニルピラリン塩酸塩、「ルル」シリーズなどに含まれるクレマスチンフマル酸塩、「パブロン」シリーズなどに含まれるマレイン酸カルビノキサミンなどもあります。

これらはいずれも第一世代の抗ヒスタミン成分に分類され、眠気などの副作用が出やすいといわれています。一方、まれですがメキタジンという抗ヒスタミン成分が使われている製品もあります。メキタジンは第二世代に分類されるため、第一世代に比べると眠気が出にくいといわれています。ただ、まったく出ないわけではありません。あくまで私の印象ですが、座学やデスクワークなど穏やかな活動をしている状況で飲み比べると、クロルフェニラミンマレイン酸塩の場合は、眠いと感じるよりも先に寝ているイメージですが、メキタジンの場合はそういえばなんだか眠いかも? と感じる余裕があります。



眠くなりにくい市販の風邪薬の選び方


眠くなりにくい市販の風邪薬を選ぶポイントとしては、大きく以下のようになります。

①(鼻水症状あり)抗ヒスタミン薬としてメキタジンが配合されているものを選ぶ
②(鼻水症状あり)抗ヒスタミン薬を含まず、別の成分で鼻水を和らげるものを選ぶ
③(鼻水症状なし)抗ヒスタミン薬を含まないものを選ぶ

なお、今回は漢方薬は除き、あくまで「風邪薬」として市販されている製品のなかから選んでいます。③は主に西洋薬+生薬といった構成となっています。



眠くなりにくい市販の風邪薬4選

①抗ヒスタミン成分としてメキタジン配合「セピーIPかぜゴールド錠・顆粒/ゼリア新薬」


【成分】
  • イブプロフェン(解熱鎮痛成分)
  • メキタジン(抗ヒスタミン成分。鼻水、くしゃみ、鼻づまりを和らげる)
  • ブロムヘキシン塩酸塩(痰を和らげる)
  • グリチルリチン酸(粘膜の消炎修復作用)
  • ジヒドロコデインリン酸塩(咳を和らげる)
  • 無水カフェイン(解熱鎮痛成分のはたらきを助ける)
  • dl-メチルエフェドリン塩酸塩(気管支を広げて、咳を和らげる)
  • リボフラビン/ビタミンB2 (風邪のときに消耗しやすいビタミンを補う)

【効能・効果】
かぜの諸症状(発熱、頭痛、のどの痛み、せき、鼻水、鼻づまり、悪寒、くしゃみ、たん、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和

【ポイント】
  • メキタジン配合なので、第一世代の抗ヒスタミン成分の入った風邪薬よりは眠気が出にくいです。ただまったく出ないわけではありません。咳止めのジヒドロコデインリン酸塩の影響でも眠くなります。
  • こちらの製品はなかなか店頭で見かけない印象です。
  • 使用上の注意「してはいけないこと」には「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」と書かれています。




②抗ヒスタミン成分を含まず、小青竜湯配合「ストナデイタイム/佐藤製薬


【成分】
  • アセトアミノフェン(解熱鎮痛作用)
  • エテンザミド(解熱鎮痛作用)
  • ジヒドロコデインリン酸塩(咳を和らげる)
  • グアヤコールスルホン酸カリウム(痰を和らげる)
  • 小青竜湯乾燥エキス(麻黄、桂皮、乾姜など8種類の生薬を配合した生薬エキス。かぜの諸症状に効果をあらわす)
  • 無水カフェイン(解熱鎮痛成分のはたらきを助ける) 

【効能・効果】
かぜの諸症状(発熱、頭痛、のどの痛み、せき、たん、悪寒、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和

【ポイント】
  • 効能・効果には「鼻水、くしゃみ、鼻づまり」など、鼻症状に関することは書かれていませんが、小青竜湯は一般的に鼻炎などの鼻症状に使われる漢方薬です。
  • 抗ヒスタミン成分は入っていませんが、咳止め成分であるジヒドロコデインリン酸塩が入っているため、眠気が出る可能性があります。
  • 使用上の注意「してはいけないこと」には「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」と書かれています。




③抗ヒスタミン成分を含まず、西洋薬+生薬「改善/カイゲンファーマ」


【成分】
  • アセトアミノフェン(解熱鎮痛成分)
  • dl-メチルエフェドリン塩酸塩(気管支を広げ、咳を和らげる)
  • 無水カフェイン(頭痛を和らげる)
  • カンゾウ末(咳をしずめ、痰を出しやすくする)※
  • ケイヒ末(頭痛を和らげ、熱を下げる)※
  • ショウキョウ末(咳をしずめる)※
 ※これらの生薬成分は、自己治癒力を高め、体の回復を助ける

【効能・効果】
かぜの諸症状(のどの痛み、せき、たん、悪寒、発熱、頭痛、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和

【ポイント】
  • ほぼ似た成分構成の「改源錠」「改源かぜカプセル」という製品もあります。
  • 粉のタイプです。
  • 眠気の原因となる抗ヒスタミン成分や、咳止め成分であるジヒドロコデインリン酸塩を含みません。代わりに生薬を用いているため、効果もマイルドですが、副作用もマイルドです。鼻水、咳の症状がそれほどつらくない方に。
  • 使用上の注意として運転に関することは書かれていません。




④抗ヒスタミン成分を含まず、西洋薬+生薬「パブロン50錠:顆粒/大正製薬」


【成分】
  • アセトアミノフェン(解熱鎮痛成分)
  • グアヤコールスルホン酸カリウム(痰を和らげる)
  • 麦門冬湯乾燥エキス(のどの乾燥を潤して痰を切れやすくし、咳をしずめる)

【効能】
かぜの諸症状(のどの痛み、発熱、悪寒、頭痛、関節の痛み、筋肉の痛み、たん)の緩和

【ポイント】
  • (メーカーHPより)眠くなったり、尿が出にくくなる抗ヒスタミン薬、便秘を起こしやすいジヒドロコデインリン酸塩、糖尿病や高血圧に影響を与えるdl-メチルエフェドリン塩酸塩が入っていません。
  • 鼻水の症状がそれほどつらくない方に。
  • 使用上の注意として運転に関することは書かれていません。




ブログアーカイブ

ブログランキング

ブログランキングに参加中です。クリックしていただけると、とても励みになります。


くすり・薬学ランキング

注目の投稿

パブロン風邪薬シリーズの違いを比較してみました

今回の記事は自分のための備忘録の意味が大きいです。 風邪をひいたとき、「私は〇〇を買う」という好みが、皆さんあるのではないかと思います。実は、私はこれまでパブロン派ではなく、(別に嫌いというわけではなかったのですが)あえてパブロンを購入することもなかったんですね。...

QooQ