危ない話。市販の痛み止めを一度にたくさん飲んだらどうなるの?

2019/01/07

熱・痛み

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今回は、あまり大きな声ではいえないお話ですが、

市販薬を不適切使用するお客さま

についてお話したいと思います。



市販薬を不適切に使用しているお客さまは意外と多い


いまはたらいているドラッグストアでもそうですし、学生時代にアルバイトをしていたドラッグストアでもそうだったのですが、どこのお店でも、ある商品を「不」適切に使用するお客さまがいらっしゃるようです。

不適切使用というのは、説明書にある使い方からはずれた使い方をするということです。とくに不適切使用の多い商品としては、咳止めのブ〇ン、ト〇ンなど、鎮静薬のウ〇トなど、解熱鎮痛薬、それから、小児用ジ〇ニンシロップを大人の方で大量に飲む、という話もよく聞きます。



不適切使用のパターン


不適切使用するお客さまのパターンは、大きく次の2つに分かれます。

①自分の嗜好のために(?)、ある製品を大量に飲む、いわゆる「中毒者」の場合
(私には副作用のほうが気がかりでよく理解できませんが、「気持ちよくなるから」とか「元気になるから」といった理由のようです)

②自分ではそうしたいわけではないのに、うまくコントロールできなくて、致し方なく、ある製品を大量に飲んでしまう場合



①の場合は、お客さまの自己責任なので、店側としてはどうすることもできないといいますか・・・

一応、中毒者の多い製品は「おひとりさま一個まで」と個数制限を設けたり、売り場には空き箱を陳列して、現品はカウンター内からわたすようにしたり、対策はしているのですが、毎回同じ人間がレジに立つわけではないですし、お客さまから「咳が出るからブ〇ンがほしい」といわれたら、売らずにはいられないのが現状です。

②の場合も、自己責任であることには変わりないのですが、こちらの場合、ご家族(や身の回りの方)からのご相談で、店側の対応を求められることがあります。

具体的には(不適切使用している)本人の写真を持参のうえで、ご家族から「この人が来てもけっして売らないでくれ」とお願いされます。止められずに売ってしまうと、ご家族からのクレームになります。本人に対しては「ご家族に売るなといわれているから売れません」とストレートに伝えることができたらまだいいのですが、できない場合も多く、さりげなく別の商品をすすめてみたり、受診をすすめてみたり、あの手この手を使って販売を止めるのですが、本人はどうして売ってもらえないのか納得できないのでトラブルになりかけることも多いです。

従業員は、商品を手に入れたい本人と、商品を売らないでほしいご家族との板挟みになり、対応に苦労しているのが現状です・・・。

②の場合は、ご家族(や身の回りの方)から、「大量に飲んでしまったようなのだけど、どうしたらいいか?」と相談を受けることもあります(①の場合は好きに大量に飲んでいるわけなので、そういった相談を受けることはありません)。



市販の痛み止めを一箱いっきに飲んでしまった相談例


ここで、以前実際に受けたことのある相談例をご紹介します。

子供が痛み止めを一箱飲んでしまったのだけど、どうしたらいいでしょうか?」といったご家族からのご相談でした。

お話を伺うと、お子さんはすでに成人した方であること、服用した時間は数時間前だと思うが、正確にはわからないこと、相談している時点では少し眠そうであるほかは体調に変化はないとのことでした。

ご家庭でできる対処としては、普段よりも多めに水をとっていただくことくらいなので、病院を受診することを勧めました。そのときに症状が出ていなくても、腎臓や肝臓などの臓器に影響が出ていることもあるので、検査することをお勧めしました。
大量に飲んでしまった場合、急性の症状としてどんなものが見られるのか確認するため、その痛み止めの成分を見てみると、次のようになっていました。

(2錠あたり)
  • イブプロフェン   150mg
  • アリルイソプロピルアセチル尿素   60mg
  • 無水カフェイン   80mg

一箱24錠入りの製品でしたので、一箱いっきに飲んでしまったということは、次の量をいっきに飲んでしまったことになります。

(24錠あたり)
  • イブプロフェン   1800mg
  • アリルイソプロピルアセチル尿素   720mg
  • 無水カフェイン   960mg



市販の痛み止めを一箱いっきに飲んだらどのような影響があるのか?


解熱鎮痛成分であるイブプロフェンを大量に飲んでしまったときのデータは少なかったのですが、通常の飲み方で比較的よく見られる副作用である消化器系の症状(胃痛、吐き気など)が強く出る可能性はあります。アリルイソプロピルアセチル尿素には鎮静作用がありますので、眠気などの鎮静作用が強く出る可能性があります。

無水カフェインは、多くとった場合にカフェイン中毒になる恐れがありますので、とくに注意が必要です。カフェイン中毒で亡くなった方のニュースを耳にしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。メーカーに確認したところ、人によっては0.5~1g程度のカフェインで中毒を起こす方もいるそうです。ということは、一箱いっきに飲んでしまった場合、中毒を起こしうるカフェイン量をとってしまったことになりますので、ふるえや吐き気・嘔吐などの中毒症状が見られないか、体調変化には十分注意が必要ですし、病院を受診したほうがいいと思います。

無水カフェイン自体は、眠気や倦怠感を和らげる目的で、病院から処方されることもある医薬品です。
添付文書によりますと、「無水カフェインとして通常成人1回 0.1 ~ 0.3 g を1日 2 ~3 回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。」といった使い方をされています。

また、多く飲んでしまったときの症状として、「消化器症状(悪心、嘔吐等)、循環器症状(不整脈、血圧上昇等)、 精神神経症状(痙攣、昏睡)、 呼吸器症状(呼吸促進、呼吸麻痺等)などの増悪を起こすことがある」とされており、胃洗浄などで薬物を取り除く処置がなされるようです。

正しい使い方をすれば、便利で、とても有用な市販薬ですが、身近にあってすぐ手に入れられるために安全性を軽視されてしまうこともあると感じています。薬は、体に作用するものです。正しく使えば100%安全ともいえないのですが、たかが市販薬と思わずに、せめて正しい使い方を守っていただきたいなと願っています。



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